消防設備士の平均年収は420万円!実はあまりコスパは良くないのは本当?

消防設備士年収アイキャッチ

最近、芸人のザブングル加藤さんが「消防設備士」として活躍する姿が話題です。「未経験でも稼げる!」という景気のいい話も耳にします。

しかし、ビルメン目線から言わせてもらうと、 「消防専門で年収420万を目指すのは、ぶっちゃけコスパが悪くないか?」 というのが本音です。階段を駆け上がり、一日中インターホンを押し続け、夜は報告書に追われる。その過酷さの割に、給料は世間並み。ザブングル加藤さんの話に憧れて安易に飛び込むと、理想と現実のギャップに絶望するはずです。

メディアが語らない「消防設備士の年収のリアル」を解説します。

目次

消防設備士の平均年収は420万円

消防設備士の平均年収は約420万円です。日本の平均年収が約460万円、ビルメン全体の平均年収が約436万円なので、平均値よりもやや低い給与といえそうです。

消防設備士年収グラフ

調査方法: 本メディア読者およびSNSを通じたインターネットアンケート

有効回答数: n=132

算出根拠: 各回答者の額面年収から算出(※独自推計含む)

消防設備士の年収が低い理由

メディアでは「稼げる」と注目される一方、現場の若手から「割に合わない」という声が消えないのには、この業界特有の3つの構造的理由があります。

「点検」メインだと単価が上がりにくい

消防点検は法律で義務付けられているため、安定して仕事があるのはメリットです。

しかし、裏を返せば「誰がやっても(最低限の基準を満たせば)結果が同じ」というコモディティ化が起きています。 マンション管理組合などは「安さ」で業者を選ぶため、激しい価格競争に巻き込まれます。利益率の低い「点検」ばかりの会社では、現場の給与に還元する余裕がありません。

下表は消防設備点検の費用相場の目安表になります。

項目単価・費用の目安備考
基本点検費3,500円 〜 5,000円出張費・基本作業料
消火器点検300円 〜 / 1本本数により変動
機器点検(半年)20,000円 〜 100,000円小〜中規模建物の目安
総合点検(1年)40,000円 〜 150,000円外観・機能・作動の全点検
消防検査立会費約 25,000円消防署による検査への同行

多重下請け構造による利益の分散

防災業界は、大手メーカーやゼネコンを頂点としたピラミッド構造です。

実際に現場を走り回る会社が「2次下請け」「3次下請け」だった場合、中間にマージンを抜かれ、「売上は大きいのに、会社に残る利益はわずか」という状況に陥ります。

ザブングル加藤さんのように注目されるのは一握りで、多くの作業員はこの構造の中で薄利多売の点検をこなしています。

多重請け構造

「消防設備士だけ」だと市場価値が上がりにくい

消防設備士の資格は、それ単体では「点検ができる人」で終わってしまいます。

現場では、火災受信機の故障が「電気系統」のトラブルであることも多いですが、電気の知識(電気工事士など)がなければ、結局別の業者を呼ぶしかありません。

「点検しかできない作業員」は替えが利くため、給与交渉のカードが弱く、結果として年収が伸び悩むのです。

とはいえ消防設備士でも年収700万稼げる会社もある

年収420万円はあくまで平均値です。年収700万円を超えています。その代表的な3つのルートを紹介します。

大手防災メーカー

能美防災やホーチキといった業界のトップランナーに勤務する道は、年収700万円を狙う最も確実なルートの一つです。

これらの企業が高い給与水準を維持できる最大の理由は、独自の特許技術に基づいた自社製品のメンテナンスを独占的に行える「ストックビジネス」を確立している点にあります。他社の介入を許さない高利益率な保守案件が収益の柱となっているため、基本給に加え、年間5〜6ヶ月分に及ぶ手厚いボーナスや、充実した福利厚生が用意されています。

一方で、現場のリアルに目を向けると、業界の顔としての重い責任がのしかかります。大規模物件や特殊な施設を担当することが多く、万が一の故障や誤作動の際には深夜・休日を問わず緊急対応が求められることも珍しくありません。また、自社製品に対する深い知識はもちろん、常に最新の法令に対応し続ける学習意欲が求められる環境です。

施工管理

現場で点検を行う作業員から、工事全体を統括する「施工管理」へとシフトすることで、年収を大きく引き上げることが可能です。

点検業務はあくまで現状維持の「経費」として扱われますが、新築や改修に伴う消防設備工事は数千万円単位の予算が動く「建設投資」であり、会社にもたらす利益の幅が桁違いだからです。

甲種消防設備士に加えて、電気工事士や施工管理技士といった関連資格を保持していれば、現場監督として年収600〜800万円の好待遇で迎え入れられる求人も少なくありません。

ただし、その対価として、工程管理や安全管理、そして下請け業者への指示出しといった「人を動かすストレス」が伴います。納期が迫れば事務作業や調整業務で残業が増える傾向にあり、単なる「技術職」から「管理職」へのマインドセットの切り替えが必要となる、タフな職種と言えます。

年収が最優先という人にはかなりおすすめですが、そこまでがつがつ働きたくないという方にはお勧めできない仕事です。

インセンティブ(歩合制)のあるメンテナンス会社

会社の規模にかかわらず、個人の営業的な貢献を給与に直接還元する「インセンティブ制度」を取り入れている企業も、高年収を実現しやすい環境です。

点検時に発見した不備箇所に対し、オーナーへ修繕の必要性を適切に説明して受注につなげることで、受注金額に応じた報奨金が支給されます。技術力だけでなく、顧客に信頼される提案力があれば、若手であっても年収700万円を超えることが可能です。

しかし、これは「点検員」であると同時に「営業担当」としての数字を追いかけることを意味します。ただ黙々と作業をこなすだけでなく、常に売上を意識したコミュニケーションが求められるため、自分のペースで働きたいタイプの人にとっては、ノルマや成果へのプレッシャーが肉体的な疲労以上に大きく感じられる可能性があります。

消防設備士の1日のスケジュールと仕事内容

点検

時間業務内容現場のリアルな事態
08:30出社・機材準備前日の報告書未完了分を急ぎ片付け、機材車へ。当日の不在宅リストと鍵の整合性を確認。
09:001件目(分譲マンション)受信機での点検モード設定。不在宅の再訪問を繰り返し、全戸点検の完遂に苦労する
12:00移動・昼休憩都心部の駐車場探しに時間を取られ、車内で短時間の休憩。午後の物件の駐禁対策を練る。
13:002件目(オフィス・店舗)営業中の店舗等。什器の移動を最小限に抑えつつ、感知器の動作試験。不備発見時の写真撮影と説明に時間を要す
15:303件目(小規模物件)前半の押しを回収するため、消火器や避難器具の点検を迅速に消化。不備箇所の簡易修繕をその場で行う。
17:30帰社・事務作業**大量の写真整理と点検結果報告書の打ち込み。**点検で見つかった不備の交換見積書作成がセットで発生。
19:00業務終了報告書が溜まると残業になるが、翌日の準備を整えてから退社。

工事

時間業務内容現場のリアルな事態
09:00現場到着・調整管理担当者への挨拶と火災受信機の一時遮断。既存配線の断線や劣化など、現場を開けて初めてわかるトラブルに対応。
10:30機器更新・配線作業狭い天井裏や点検口での作業。図面通りにいかないルート変更など、現場での即断即決が求められる。
13:00連動試験準備施工した箇所の単体テスト。他職種(電気工事等)との兼ね合いで作業が一時中断することもある。
15:00全館連動試験(山場)エレベーター、非常放送、防火扉との連動確認。一箇所でも不具合が出ると、原因究明が終わるまで帰れない緊張感。
17:30復旧・引き渡し養生撤去と清掃。ビル管理側へ「正常復旧」を報告し、承認印を貰う。この手続きが地味に重要。
18:30業務終了(現地解散)現場状況により前後するが、試験がスムーズなら定時。トラブル時は20時を回ることも。

消防設備士がビルメンにお勧めの理由

「空調・給排水」に比べて、身体的負荷が少ない

ビルメンが向き合う設備の中でも、消防設備は心身への負担が少なく、非常にクリーンです。

汚水や悪臭にまみれる給排水トラブルや、猛暑の屋上でフィルター清掃に追われる空調メンテナンスと違い、消防設備の基本は「システムが正しく作動するかの確認」です。

重機を振り回すような力仕事は少なく、感知器や制御盤といった精密機器を扱うため、現場環境は常に清潔。体力的な消耗を最小限に抑えつつ、法律に守られた「独占業務」を淡々とこなせる点は、長く働き続けたいビルメンにとって最大のメリットと言えます。

「点検業者の手抜き」を見抜き、自分の身を守れる

ビルメンは専門業者の点検に立ち会いますが、無資格だと業者の作業が適切かどうか判断できず、言いなりになるしかありません。

しかし、知識があれば業者の「手抜き」や「見落とし」をその場で見抜き、適切な指導ができます。これは業者を追い詰めるためではなく、万が一の火災時に「設備が動かなかった」という事態を未然に防ぎ、管理責任を問われないための「最高の護身」です。

実際に消防設備士で年収を上げた人の話

29才のAさん:消防設備士をとって派遣→正社員に


状況: 短期離職を繰り返し、派遣会社で施工管理職。彼女のご両親に結婚の挨拶に行ったところ正社員でないとだめといわれて転職活動を開始。ザブングル加藤さんの記事を読み消防設備士を取得

成果: 資格を武器に、地元の消防設備点検会社に正社員として採用される。年収は派遣時代の350万円から370万円へと20万円アップ。現在は正社員として腰を据え、現場で活躍中。

47才のBさん:ビルメンが「転職」を機に年収50万円アップ


状況: 独立系の小規模ビル管理会社に勤務。45歳になり、現場での体力仕事に限界を感じ始めていた。昇給も頭打ちの状態だったが、一念発起して「消防設備士(甲種4類)」を取得。単なる「立ち会い」ではなく、業者の見積精査やオーナーへの修繕説明ができるレベルまで知識を深めた。

成果: 資格と実務経験をセットで評価され、大手系列のビルマネジメント会社へ転職。現場の作業員から、業者をコントロールする「管理側」のポジションにシフトしたことで、年収は380万円から430万円へと50万円アップ。体力的な不安を解消しつつ、年収アップを実現。

消防設備士は年収を上げたいビルメンおすすめ度「★★☆☆☆」

結論として、消防設備士は「今の年収に満足していないビルメン」にとって、ハード寄りな働き方を許容できるならおすすめだが、そうでないならばあまり年収UPにはつながらない資格といえそうです。

年収アップ期待値:★★☆☆☆

消防設備士は「4点セット」の次に人気がある資格ですが、ビルメンとして働く以上、この資格だけで年収が跳ね上がることは稀です。 多くのビル管理会社において、消防設備士は支給される資格手当は月額1,000円〜5,000円程度と悪くないですが、資格の難易度と比較すると高額とは言えないため、星2としました。

取得コスパ:★★☆☆☆

乙種(点検)は比較的容易ですが、甲種(工事・整備)は製図試験があるなど、合格には相応の学習時間が必要です。しかし、苦労して取得してもビルメン現場での評価は「4点セットの添え物」程度。費やした時間と労力に対する給与へのリターンは、他の選任系資格に比べると低めなので星2としました。

求人の安定性:★★★★★

法律(消防法)によって点検・整備が義務付けられているため、市場の需要は永久に無くなりません。景気に左右されず仕事がある、という点ではこれ以上ない安心材料になります。

業務の楽さ:★★★★☆

ビルメンの「待機時間」のようなゆとりは期待できません。点検は1日の訪問件数が決まっており、移動と作業の繰り返し。工事は納期とトラブル対応に追われます。狭い場所での作業や重い機材の運搬、階段の上り下りなど、肉体労働としての側面が強く、楽に稼ぎたい人には向きません。

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この記事を書いた人

累計300名以上のビルメン・建設従事者の転職支援実績を持つ専門家チームが運営。現場の知見と最新の労働市場データを掛け合わせ、ビルメン業界のキャリア形成における「最適解」を解説します。全ての記事は、業界特化型エージェントの経験に基づき、実務に即した視点で構成されています。

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